NHKの朝ドラ「べっぴんさん」では、番組の衣装や小物など様々なところに刺繍の装飾が施されていますね。ドラマに登場する、すみれの母・はなが作ったタペストリーや刺繍の刺し方についてまとめました。
すみれの母が作ったタペストリー
すみれの部屋に飾られているタペストリー
すみれの母は、すみれが幼い時に亡くなってしまいますが、母はなが思いを込めて作ったタペストリー(壁掛け)はすみれの部屋に飾られていましたね。
#べっぴんさん ・NHK神戸放送局「ヒロインの母が作ったタペストリー」や番組関連のパネル展示が決定!【入場無料】今週17~19日開催の #ビーズアートショー 神戸(kiito・神戸税関前)にて、はなさんのタペストリーを展示します☆https://t.co/L5eGvF4sg5 pic.twitter.com/XnQTQwtknE
— ビーズアートショー横浜・神戸・名古屋 (@Bead_Art_Show) 2016年11月14日
ドラマで使われたタペストリーは2016年11月に行われたイベントで展示されていました。
この素敵なタペストリーには、どんな思いが込められていて、どのように作られたのでしょうか。
タペストリーのデザインについて
このタペストリーの原案を担当したのはデザイナーの谷口聖子さんで、谷口さんはべっぴんさんに登場する街並みなど舞台美術全般をデザインされています。
タペストリーは、クラシカルなものをよく知っているすみれの母はなに合わせて、イギリスの伝統の「クルーウェル刺繍」のテイストを取り入れたそうです。
デザインは、母はなの気持ちを考えながら、娘達の名前と同じ「すみれ」や「ゆり」の花や茎、クローバーなどのモチーフを入れて考えたそうで、実際に刺繍を担当したのは英国伝統刺しゅう作家の二村エミさんです。
このタペストリーの色やデザインからは、娘たちの成長や幸せを願う母はなの優しい気持ちが伝わってきますね。
クルーウェル刺繍とは?
母はなが作ったタペストリーで参考にされた「クルーウェル刺繍」とは、クルーウェルウール糸を使った1000年以上の長い歴史がある刺繍の方法で、現代では鮮やかな色のウールの刺繍糸や、ウールのような風合いのアクリル糸が用いられることが多いそうです。
ウール糸を使うので、クルーウェル刺繍で描いたモチーフは立体的で、暖かみのある模様になります。
ドラマの中の作品もそうでしたが、モコモコしていて可愛い刺繍ですね。
クローバー&すみれの刺繍の刺し方は?
「すてきにハンドメイド」べっぴんさん特集が放送
1月5日に放送されたNHK Eテレ「すてきにハンドメイド」はべっぴんさん特集で、すみれ&クローバーの刺繍の方法が紹介されました。
番組では、実際に「べっぴんさん」に登場したタペストリーの刺繍もした二村エミさんが、初心者にも出来る基本のステッチを紹介していました。
クローバー&すみれの刺繍に使うステッチは3種類
- クローバーの葉っぱ、すみれの花…サテン・ステッチ
→サテンのように艶があって、立体感が出せるのが特徴
- 茎の部分…アウトライン・ステッチ
→1針1針丁寧に刺すと、きれいに仕上がる
- すみれの葉っぱの半分…コーチドトレリス・ステッチ
→格子状に糸を渡して、その交点に斜めに糸を渡して留める方法
「コーチドトレリス・ステッチ」は、名前は難しそうですが刺繍は基本的な刺し方でした。
この下に刺し方の説明を書いています。
クローバー刺繍の刺し方
材料
- 刺しゅう枠
- 刺しゅう針 10番
- 25番 刺しゅう糸 緑&黄緑 適量
- 麻のハンカチ 45.5 x 45.5
番組では特に触れられていませんでしたが、麻のハンカチとツヤツヤしたサテンステッチのコントラストがより作品を素敵に見せてくれると思います。
作り方
1.ハンカチのオモテに図案を置く
→図案をハンカチの端から4.5cm離すと、バランスよく刺繍ができる
2.図案の上にセロハンを重ねて、待ち針で固定する
→セロハンがないと、図案に穴があいてしまうため
3.手芸用のトレーシングペーパーを図案の下に挟み、セロハンの上から図案線をトレーサーでなぞる
→トレーサーは、インクの出なくなったボールペンでもOK
4.図案を写したハンカチを刺しゅう枠にピンと張る
→指でハンカチを押したときに、沈まないくらいにピンと張るのがちょうど良い
5.刺しゅう糸を90cm出して、6本の束から1本引き抜いて針に通し、両端を玉結びにして2本取りにする
→1回の糸の長さは肩幅くらいが目安 (約45cm)
6.茎の部分にバックステッチをしてからアウトライン・ステッチで刺していく
- 茎の端から1.5cmくらいのところにオモテから針を刺す
- 糸がほどけないように0.5cmずつ戻ったところにバックステッチを2回
- 茎の端からアウトライン・ステッチをかけ始める
→アウトライン・ステッチの1針はだいたい0.4cmで、最後まで刺したら裏に針と糸を出し、玉結びをしないで裏に渡っている糸に4~5目巻きつけて布の際で切る
7.葉っぱ部分をサテン・ステッチで刺していく
きれいに仕上げるコツは、幅の広いところから刺し始めること・布に垂直に針をさすこと
(図案の大きさにもよりますが)図の黄色い部分を10目程で埋めると立体感が出ます。糸始末は裏に渡っている糸の中に針を入れて反対側に出して切ります。
同様に、他の部分も中央から外に向かって針を指して、葉っぱの中央線の部分は左右同じところに針をさすときれいにできます。
番組で紹介されていた作り方は、NHKのウェブサイトで1月19日まで公開されています。
ドラマの中で母はなはすみれに「四つ葉のクローバーの4つの葉の意味は、勇気・愛情・信頼・希望で、これが全部そろうと幸せになれる」と言っていました。
クローバーの刺繍は、自分のお守りや大切な人へのプレゼントにぴったりですね。
すみれ刺繍の刺し方
材料&作り方
すみれの刺繍の材料と作り方は、クローバーのときと同じです。
コーチドトレリス・ステッチ
1.コーチドトレリス・ステッチをする葉っぱを縦に4等分する
2.2本取りの刺繍糸で、縦に3本糸を渡す
3.横に等しい間隔で6本糸を渡す
4.縦と横の交点に斜めに糸を渡して固定する
5.コーチドトレリス・ステッチをした続きの糸で、葉っぱの周りにアウトライン・ステッチを刺す
6.残り半分の葉っぱを、クローバーと同じ要領でサテン・ステッチで刺す
これで完成です!
コーチドトレリス・ステッチが可愛いですね。
まさに別品(べっぴん) = 「思いを込めた特別な品」になりそうですね。
クローバー刺繍の刺し方動
NHKのウェブサイトには1月19日までしか作り方動画が公開されていませんが、刺繍作家で刺繍イラストレーターの川畑杏奈さん(annas)が、クローバーの作り方を動画で公開してくださっています。
完成品:annasさんのインスタグラムから
ドラマの中に出てきたものを川畑さんが、生徒さんのリクエストに答えて、再現して作って下さったそうです。
動画の中では刺繍のポイントなども解説してくださっていて、とてもわかり易いです。
他にも川畑さんのYouTubeチャンネルには、色々な刺繍の動画がアップされているので是非チェックしてみてください。
川畑さんは刺繍作家や刺繍イラストレーターの他に、刺繍の教室も開いています。
べっぴんさんに出てくる作品や川畑さんの作品を見て、刺繍は工夫次第で針と糸だけで色んな表現ができるんだなぁと驚きました。
歴史のある刺繍の方法や、地域や国による文化の違いが刺繍に反映されていて素敵ですね。
まとめ
- 朝ドラ「べっぴんさん」に出てくる刺繍は英国伝統のクルーウェル刺繍テイスト
- クルーウェル刺繍はウール糸を使って、モコモコしたモチーフが出来る
- 四つ葉のクローバー&すみれの刺繍はサテン・アウトライン・コーチドトレリスステッチで出来る
昔から伝わる技術は素敵なものばかりなので、機械や技術が発展しても手作りの伝統は残していきたいですね。