東京推進キャンペーン &TOKYOのロゴ批判に見る「伝え方」の大切さ ブランドコンセプトや東京らしさとは?

今回も前回に引き続き、最近世間をにぎわしている東京五輪に関連する話題です。東京都が2020年東京五輪に向けて始めた「東京ブランド推進キャンペーン」のロゴ「&TOKYO」について、ブランディングや伝え方の大切さについてまとめました。

&TOKYOのロゴについて

「&TOKYO」は東京都が2020年東京オリンピック・パラリンピック開催とさらにその先を見据えて、旅行地としての東京を強く印象づける「東京ブランド」の確立に向けた取り組みの一環として、2015年に立ち上げた「東京ブランド推進キャンペーン」のロゴであり、キャッチコピーです。

「&TOKYO」の前に、様々な言葉をつけることで観光客にアピールするのが狙いで、「FOOD&TOKYO」や「FASHION&TOKYO」など一般的な名詞だけではなく、申請すれば誰でもこのロゴを使えるため、「上野動物園&TOKYO」のように場所の名前や、お店・ブランドの名前を入れて使うことができるそうです。

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デザインしたデザイナーは?

このロゴをデザインしたのは、大手広告代理店・博報堂の子会社でデザインによるブランディングを専門としているHAKUHODO DESIGNの創立者で代表取締役社長の永井一史氏です。

永井氏はロゴだけではなく、キャッチコピー、ポスター、ブランドブック、映像などの制作に関する東京ブランドのデザイン全般を監修するクリエイティブ・ディレクターに、2015年当時の東京都知事だった舛添氏に任命されています。

永井氏のプロフィールや経歴

  • 1961年生まれの55歳で多摩美術大学美術学部デザイン学科卒業
  • 大学を卒業後、博報堂に入社し、アートディレクター、シニアクリエイティブディレクターを歴任
  • 2003年にHAKUHODO DESIGNを設立、2014年には多摩美術大学の教授にも就任
  • 毎日デザイン賞、クリエイター・オブ・ザ・イヤー、ADC賞グランプリなど国内外の受賞歴多数

永井氏はブランディングを専門としており、多くの企業や商品のロゴの開発に関わり、プロジェクトデザインやソーシャルデザイン、コミュニケーションデザインなども行っているそうです。

これまで広告制作やブランディングに関わってきた会社や商品は有名なものもたくさんあり、サントリーの伊右衛門や資生堂の「一瞬も一生も美しく」の企業広告、東京都のヘルプマークも手掛けたそうです。

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東京都のヘルプマーク

&TOKYOのブランディング

&TOKYOについて、もっと知る

&TOKYOには公式ホームページがあり、そこに&TOKYOのロゴとキャッチコピーを広めるためのコンテンツがたくさんあります。

東京に住んでいないと&TOKYOの存在すらあまり知りませんが、東京に住んでいても&TOKYOの見た目以外知らない人は多いのではないでしょうか。

&TOKYOのコンセプト

「つながる」というキーワードで、なぜ「&」TOKYOなのかが伝わってきます。

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&TOKYO公式ウェブサイト

ロゴ紹介のムービー

2018年5月 動画削除

ロゴの色と意味について

&TOKYOのロゴには5つの色展開があり、それぞれに日本伝統の色が使われ、意味もあります。

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東京都のウェブサイトより

私は個人的にロゴ紹介のムービーやこのロゴはとても素敵だと思います。しかし、批判が多く小池知事も変更を示唆していることから、以下にまとめてみました。

ロゴに対する批判について

どんな批判がある?

  • デザインの盗用疑惑

→楽天のロゴに似ている、海外の会社や団体のロゴに似ている

  • デザイン料の高さに対する批判

→ロゴだけではなく、商標の調査料や映像制作など、&TOKYOのブランディング全体にかかった監修料が1億3,000万円と報道されている

  • デザインがシンプル過ぎるという批判

→幼稚園児でも描ける、5分でできる、など

  • 意味が伝わりにくいという批判

→◯◯&TOKYOだと、東京が付け足しみたい

&TOKYOロゴの見直しや小池知事の対応は?

現在「&TOKYO」のロゴは、世間に浸透しているかが疑問視され、見直しが検討されています。

11月25日の「東京ブランドのあり方検討会」での発言

小池知事

  • &TOKYOのロゴの訴求力について調査中
  • 訴求力をどう高めるか、別の方法があるか考え中

検討会委員

  • &TOKYOは何を言いたいのかわからない (グラムコ・山田敦郎社長)
  • 何を言いたいのかさっぱりわからないのが現状 (日本政府観光局・松山良一理事長)
  • ブランドのロゴとして使うのは無理があるのではないか(日本旅行業協会・田川博己会長)
  • 「&TOKYO」というのは、何かNo.1のものがあって、次が東京だというNo.2の印象を持ってしまう、外国人の友人に聞いても同じ意見だった(獨協大・慶応大非常勤講師・師岡カリーマ・エルサムニーさん)
  • ロゴはいかにシンプルかが大事、(様々な◯◯&TOKYOのロゴが印刷された紙を見せて)なぜこんなにたくさんの色を使うのか(シャネル日本法人・リシャール・コラス社長)

またまたユニフォームに続いて、厳しい意見が多いですね。「&=つながる」はわかりやすく、5色の色展開はとてもシンプルだと私は思いますが。

伝え方の大切さ

「批判をする」と言うのは、もしかしたら人の性かも知れないし、すでに東京では五輪エンブレムの盗用疑惑で人々が敏感になっているのもあるかもしれませんが、知事やメディアの「&TOKYO」の民衆への伝え方もとても大事だと思います。

小池知事は何に対しても厳しく審査して、東京のためにベストを尽くしてくださってるとは思いますが、メディアの切り取った伝え方だと、今まで決まっていたことにケチをつけているみたいにも受け取れますよね。

また、例えばメディアでは「&TOKYO」のブランドイメージなどは伝えず、

  • ニューヨークの「I♥NY」のロゴを参考にした

とだけ報道してしまえば、それを見たり聞いたりした人は「パクリ?」と思い、いいイメージは持たないですよね。

まだまだこのロゴが浸透していない今、こういった第一印象を受けてしまう人が多いのは残念な気がします。しかしメディアもこういった報道のほうが視聴率は取れるんでしょうが…。

本当は「&TOKYO」の制作秘話や東京の素晴らしさをまとめた番組を放送してほしいです。

今後、東京に住んでいる人だけでなく、日本人全員が日本や東京、そして日本人であることに誇りを持てるようなキャンペーン、東京オリンピックが開催できるように陰ながら応援したいと思います。

まとめ

  • 「&TOKYO」は、東京ブランド推進キャンペーンのロゴでキャッチコピー
  • ウェブサイトもあり、とてもしっかりしたブランディングの上に作られている
  • 申請をすれば「&TOKYO」の前に企業名やブランド名などを入れて誰でも使える
  • すでに使用は始まっているが、世間にあまり浸透しておらず、批判も多いため見直しが検討されている

私は「&TOKYO」のコンセプトや色展開などはとても素敵だと思いました。シンプルなロゴでもブランディングはしっかり作り込まれているので、小さなものづくりにも参考にしたいと思います。まずは頑張れ&TOKYO!